単語学習およびその暗記法については、これまでも多くの質問が寄せられてきました。
単語学習に関して多くの質問が寄せられるということは、それだけ単語学習に悩まされている(悩まされてきた)英語学習者が多いということでしょう。
今回は、単語学修についてのわたし独自の考えをまとめたいと思います。
 [3回]
[3回]
            
              
              よくある質問として、
良い単語帳があれば、教えてください。
日常会話向けの単語帳があれば、教えてください。
「ターゲット1xxx」や「速読○○」、「システム○○」を覚える(覚え直す)のは有効的ですか?
良い単語(のスペル)の覚え方があれば、教えてください。
単語・熟語の効率的な覚え方(裏技)を教えてください。
といったものがありますが、これは大きく、単語帳の「購入」と、その後の「実践」に分けられます。
こんなことを言っては元も子もありませんが、わたし個人の考えとしては
単語集(帳)の購入をあまり勧めていません。というのも、これまで単語帳なるものを最後までやりきったことのある人はどれだけいるのでしょうか。
かつて、100人以上の大学生に尋ねたことがありますが、その数は1割にも満たしませんでした(わたしもその9割に入っています)。
以下がその主な理由です。
①買っただけで(持っているだけで)安心・満足してやらない
 ②いつどこで出てくるかもわからない単語を覚える気にならない
 →せっかく覚えたのに、1度もその単語を見たことがない(ため、やる気が削がれる)
特に、大学生以降、いわゆる「単語テスト」が強制されるような環境にないことを考えると(自主的にやるのであれば別ですが)、
実践を通して知らない単語を覚えていったほうが現実的であると言えます。
また、多くの人は「覚えられない」と言いますが、物事を「覚えられない」という人はまずいません(認知障害を患っている場合は除きます)。
朝ごはんを食べた直後であれば当然何を(今)食べたのか覚えていますよね。
しかし、それが一日経つと思い出せなくことはよくあります。つまり、
「覚えられない」のではなく、
「思い出せない」のです。
より正確には、
「覚える・覚えている・思い出す」の3つがうまく連動したときに「覚えている」という感覚が得られます。
いわゆる「ど忘れ」(『あーなんだっけ、そうそうアレだよアレ』)は、「覚えている」けど、「思い出せない」状態であると言われます。
この状態になるべく陥られないようにするためには、
「思い出す」訓練をすれば良いということになります。
話が長くなりましたが、これらのことを踏まえ、以下のやり方をおすすめしています。
-  知らない単語と出会ったらスマホの単語アプリにメモする
- 合間時間や帰りの電車、就寝前にそれらを見返す
- 見返す間隔を最初は短く、そしてだんだんと広げる(例:15分→30分→1時間→2時間といったように)
- メモ帳アプリに移し、単語アプリから消す
- たまーにメモ帳アプリを見て思い出せなかったら単語アプリに戻す
- 覚える(思い出す)単語は1日10個で十分(きついようなら、1日5個でもOK)
これだけで十分「あなた専用の単語集(帳)」が出来上がります。
わたしは「シンプル単語帳」というアプリを使っています(2018年現在)。このアプリにはテスト機能もありますし、覚えたと思う単語をいったんリストから外す機能もあります。お試しあれ。
市販の単語帳は何かの目的のために編纂されたものなので、みなさんが求めているのとは別の単語が収載されている可能性があります。
TOEIC や大学受験用の単語帳はどれも非常に精度が高いですが、結局、前述の①と②の現象が待っていますから、TOEIC で高得点を取りたいのであれば、
TOEICの勉強をしながら同時に単語も覚えていくのが現実的かつ効率的だと思います。
仮に毎日10個ずつ覚えていったとして、1年やれば理論上3650個覚えられます。
もちろん忘れることがありますが、それを考慮したとしても1年で2000 個は覚えられるでしょう。
また、「思い出す」訓練が重要なので、1日に70個覚えるよりも、
毎日10個ずつ覚えていったほうが効果的ですし、なにより
数が多いとやる気がなくなります(これが
最も致命的!)。
無理なく安定してできる数だけの単語を覚えていけば良いと思います。
とりあえず今は、多くの英語に触れながら、各人がそれぞれの単語リスト(アプリ)を作り、継続して単語学習に励んでみるのが良いと思います。
Q.1 単語は書いて覚えるほうが良いですか?
書いて覚えることは大切ですが、
書かないで覚えることもまた大切です。
例えば、「薔薇」という漢字は書けなくてもこの漢字の存在や読み方は知っていますよね?
語彙というのは、読めれば(意味がわかれば)それだけで十分なものが多く、すべての語彙を書けたり使えるようになる必要はありません。
読めれば(意味がわかれば)十分な語彙を「受容語彙」、使えるようになったほうが良い語彙を「発信語彙」といいます。
たいていの小学校で、漢字を覚えさせる際に漢字をとにかくいっぱい書かせるのは、それらはすべて書けるようになっておく必要のあるものだからです。
英単語も同じように、書かなくても覚えられるものは、声を出したりその単語が使用されている文章を覚えたりするなどして、頭にインプットするほうが時間的にも効率的です。
書けるようになる必要のある英単語でも、書いた自筆を見ながら(ときに歩きながら)声に出すと記憶に残りやすくなります。ぜひお試しください。
なお、英単語を覚える際は、「interesting 面白い」のように、
「英単語→その訳語」といったようなやり方では覚えない方が良いです。
これではどういった状況でこの interesting という単語が使われるのかが不明ですし、ややもすると、日本語の「面白い」に引っ張られて日本語の「面白い」と同じように使ってしまうかもしれません。
訳語が同じであっても使い方が違うということはよくあります。英単語を本当に意味でマスターにするには、例えば、
 a 
pledge of support(
支援の
約束)
 He made a 
pledge of love(彼は愛の
誓いをした)
といったように、
句や文章レベルでその使い方を覚えるほうが得策です。
こちらのほうが記憶に残りやすいですし、使い方までも(感覚的に)掴むことができて、一石 '三' 鳥です(上の例から「pledge は固い表現」だということがわかる。
Q.2 英単語は短期集中で覚えたほうが良いですか?
短期集中ではなく
「長期持続」が良いと思います。
例えば、その日のお昼にその日の朝ごはんを思い出すことはできますが、1日経つとなぜか思い出せなくなりますよね。
つまり、「記憶」というのは、
覚えることではなく持続させるのが難しいわけです。
英単語(以外もそうだと思いますが)は、
覚えることが重要なのではなく、覚えたものをいかに持続させていくかが重要です。そして、
その持続のためには定期的な繰り返しが必要だということがわかっています。
例えば、今日の朝覚えたことを今日の昼にまだ覚えているかを確認する。そして、夜にもまだ覚えているかを確認する。さらにさらに、二日後にも五日後にも、そして一週間後にも覚えているかを確認する。
この繰り返しこそが(記憶の天才ではない人にとって)記憶するための良い方法の1つだと考えられています。
急いで付け加えますが、「繰り返し」はほんの5分程度の短い時間で行うのでも OK です。大切なのは時間ではなく繰り返すことです。
Q.3 単語の核意味(イメージ)が乗っている本や辞書を教えてください。
ここ最近この手の本はたくさん出ていますから、「コレ!」というものを紹介するのは難しいですが、少しだけご紹介します。
しかし、いつもお伝えしているように、勧められた(紹介された)から即購入するというのはあまり
良くないので、ネットで「ポチッ」する前に、必ず書店などで確認することを
強く奨めます。
①『コア・イメージで英語感覚を磨く!基本語指導ガイド』(森本俊、明治図書、2017年)
中学校で習う単語を中心に、わかりやすい言葉で解説しています。
②『英単語イメージハンドブック』(大西泰斗・ポールマクベイ、青灯社、2008年)
説明は若干独特ではありますが、基本的な英単語のイメージを知るにはちょうど良いと思います。
③『英語語義イメージ辞典』(政村秀実、大修館、2002年)
語源にまで遡り、英単語のイメージを解説しています。細かいことを知りたい人向けといった感じでしょうか。
④『イメージでわかる・使える英単語【前置詞編】(田中茂範、アルク、2019年)
⑤『イメージでわかる・使える英単語【動詞編】(田中茂範、アルク、2019年)
⑥『イメージでわかる・表現英単語』(田中茂範、学研、2019年)
最近出されたもので、かつ、著者も同じですので、まとめておきました。タイトルからわかる通り、「覚える」ことよりも「使う」ことに重点をおいて、各英単語のイメージを解説しています。
以上です。
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