Q.1 おすすめの文法書はありますか?
たくさんありすぎて逆に困るのですが、ここではいくつかの本を紹介したいと思います。
注意点として、
わたしの話を鵜呑みにせず、必ず書店に足を運び、手に取って実際に見てみてください。
〈初級・中級〉
①
『ジーニアス総合英語(第2版)』(中邑光男・山岡憲史・柏野健次、2022年、大修館)
いわゆる高校生向けの総合英文法書。
学習者が気になりそうなところへの配慮が感じられる本で、途中にある 
Question Box は実に秀逸です。
『Evergreen』(旧『Forest』)、『Vintage』、『Vision Quest〗系統の本がほしいということであれば、これがおすすめ。
②
『一億人の英文法』(大西泰斗・ポール・マクベイ、2011年、ナガセ)
ここ10年でもっとも売れた英文法書の1つ。
英語ネイティブスピーカーには英語の世界(英文法)がどう映っているのかをイラストとともにわかりやすく解説しているのが特徴的です。この本の【英会話編】もあります。
同著者は『FACTBOOK』(2019年、桐原書店)という英文法書も出しています。
③
『英文法ビフォー&アフター』(豊永彰、2009年、南雲堂)
あまり知られていないが中身はたいへん濃い。
各章の合間合間にこの著者ならではの英文法観や注意事項が語られていて、それを読むだけでも非常にためになります。この著者がいかに英文法を強く想い、これまで指導してきたのかを感じることができます。
④ 
English Grammar in Use Series(Cambridge University Press)
世界でもっとも人気のある英文法書の1つ。
表紙が
オレンジのものが Basic、
ブルーが Intermediate、
グリーンが Advanced と3つのレベルが用意されていて、音声や問題、解答も付いていて非常に使いやすいです。ブラジル人の私の友人もこれを持っていました。「
英語で書かれた英文法書」がほしいのであれば、これがおすすめ。
〈中級・上級〉
⑤
『コーパス・クラウン総合英語』(井上永幸(監修)、2022年、三省堂)
①と同様、いわゆる高校生向けの総合英文法書だが、中身が濃く、かつわかりやすい。
単に文法知識の寄せ集めではなく、「なぜそうなるのか」という説明が豊富で、「高校文法の一歩先」を求めるのであれば、これがおすすめ。
⑥
『表現英文法 増補改訂第2版』(田中茂範、2017年、コスモピア)
英語母語話者の感覚についての説明が豊富。
本書を通して読むと、英文法に対する理解や意識が大きく変わるかも!?
ただ、章構成が独特で、一般的な英文法書に慣れすぎていると少し使いづらいかもしれません。
⑦
『英文法解説』(江川泰一郎、1991年、金子書房)
少し古いが、多くの英語教師ならび研究者に愛読されてきた名著。
生きた例文の豊富さとその日本語訳の的確さは異常なまでに精密です。また、合間合間にある【解説】は目から鱗が落ちる情報が満載です。ただ、初学者には説明や例文が難しいかもしれませんので、力がついてきたら手に入れてみるのも良いでしょう。
⑧
『英文法総覧』(安井稔、1996年、開拓社)
この本の著者は英語学の世界では知らぬもののいないほど有名な人。その人が書きあげた文法書がこちら。
練習問題等が一切ないにもかかわらず、総ページ数は600を超える文法書です。高校レベルをはるかに超えていますが、しかし、英語教師を目指す人や英文法の高みに登ってみたいという人にはおすすめの本です。
⑨
『現代英文法講義』(安藤貞雄、2005年、開拓社)
「向こう30年は(人によっては50年とも)これを超える文法書は出ない」と言われたほどの英文法書。
出版から15年経っていますが、今のところこれを超える文法書は出ていないと思います。‘ふつうの’文法書しか触れてこなかった人にちょっては卒倒レベルの内容です。英文学・英語学を専攻する学生には持っておいてほしい1冊です。
⑩ 
Practical English Usage [4th ed.](Swan、2017、Oxford University Press)
1980年の初版から現在まで改訂が重ねられ、この本を知っているだけで、「おっこいつやるな」と思われるほどの良書。
知っているだけでなく、所持していて、かつ中身を読み込んでおけば、それだけで「文法マニア」と呼ばれてもおかしくないぐらい、中身の濃い英文法書です。
以下がこれの翻訳本なので、そちらを持っていても Good。
⑩´
『オックスフォード実例現代英語用法事典 第4版』(吉田正治、2018年、研究社/オックスフォード大学出版局)
〈おまけ〉
⑪ 
A Comprehensive Grammar of the English Language(Quirk et al.、1985年、Longman)
⑫ 
The Cambridge Grammar of the English Language(Huddleston and Pullum、2002年、Cambridge University Press)
「現代の世界2大英文法書」と呼ばれるのがこの2冊。
日本で売られている文法書はせいぜい 500 ~ 600 ページ程度でしょうが、この2つの本はともに優に 1500 ページを超えています。判の大きさが違うので、日本の本の大きさにしたら
実質 2000 ページ超はあります。開くのも大変なレベルです。購入しないまでも、図書館に行く機会があったら、ぜひ1度は手に取ってみてほしい文法書です。苦学生ながら、当時、⑪の本を頑張って買ったことは今でも良い思い出です(当時で 15,000 円ぐらいだったかな?)
ちなみに、⑪と同名の本がありますが、表紙が青い(紺色っぽい)のが⑪ですので、間違えないよう注意したほうが良いですね。
さらにちなみに、⑫の翻訳にわたしも少し関わりました。気になる方は「英文法大事典(シリーズ)」で検索してみてください。
Q.2 おすすめの辞書はありますか?
辞書はものすごい数があり、「この1冊!」を決めるのはたいへん難しいので、わたしが普段使用している辞書をいくつか紹介します(カッコ内は出版社)。
①『ジーニアス英和辞典』(大修館)
②『ウィズダム英和辞典』(三省堂)
③『コンパスローズ英和辞典』(研究社)
④『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)
※①はおそらく現在の日本で一番有名な辞書(よって、一番所有率も高い)
※②と③は①に迫る勢いで売れている辞書(だが、その域にはまだ達していないといった感じ)
辞書を選ぶ基準をここで詳細に説明するのは難しいですが、辞書というのは出版社によって(実は)中身に差があります。辞書の仕事もしている都合上、各出版社の辞書を読み比べをしたりしますが、けっこう違いがあっても面白いですよ。
辞書といっても数が多くて混乱するでしょうが、
書店に出向き、実際に見て触って、その中から(直感的に)自分に合うものを選ぶと良いと思います。
Amazonなどのネット購入サイトでは、直に手に取ることができないので、コレ!というのを選びたいのであれば、面倒ではありますが、書店に出向くのが良いと思います。
ちなみにわたしは、最近では気に入った辞書はスマホのアプリでも購入し、いつでもどこでも見られるようにしています。
ネットの辞書は広告が出てきたりして繰り返し使うとなると非常に不便ですし、
電子辞書だと不要な辞典がたくさん入っていてそれも使いづらいです。スマホの場合アカウントさえ同じであればスマホを新しいのに変えても再度DLして使えます(電子辞書は買い直しになります)。
昔は「カラー」「音が出る」などが電子辞書の売りでしたが、今やスマホのほうが高機能ですから、無理に電子辞書を買う必要はないような気もします(わたしは両方持っていますが)。
あと、せっかく電子媒体の辞書を手に入れるなら、
「大辞典」系の辞書も候補に入れても良いかもしれませんね。
英文学科の学生の場合、やはり大辞典の存在は知っておく必要がありますし、それを(1回)使うだけでも「自分は英文学科の人間になったんだなぁ」という謎の実感を味わうこともできます。ちなみに、もし電子辞書を購入される場合は
絶対に大辞典が入っているものが良いです(それがプロとアマチュアの分かれ目ともいえますから)。
ちなみに、英和の大辞典系では以下のものが有名です。参考までに。
⑤『ジーニアス英和大辞典』(大修館)
⑥『リーダーズ英和辞典』(研究社)
⑦『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
Q.3 おすすめの reading 本はありますか?
Graded Readers がオススメです。
ただし、これは本のタイトルではなく、
レベル別に分けられた(単語数や文法レベルが制限された)読み物全般のことをいいます。
有名なところでは、Oxford Bookworms や Macmillan Readers、Pearson Graded Readers(旧:Penguin Readers)といったものがあります。わたしは Oxford Bookworms をよく使っていました。
「英検X級」とか「TOEIC Y点」といった表記が付いていて自分に適したレベルの本を選ぶことができます。また、子ども向けから大人向けまで幅広く話が揃えられていますので、自分のレベルだけでなく、自分の趣向に合った読み物を自分の意志で選ぶことができます。
①レベルが抑えられていること、
②自分の好みに合わせられること、これが Graded Readers の最大の強みです。
学校の授業で使うテキストは①でも②でもないことが多いので、これを機に自分のレベルに合った自分の好きな本を読んでみてはいかがでしょうか。
ネットでも購入することはできますが、完全に初めてなようであれば、大きめの書店の洋書コーナーに行くと置いてあると思います。
Q.4 英会話を学びたいのですが、オススメの本はありますか?
「会話」を学びたいのであれば、本に頼るのは望ましくありません。
「よく使うフレーズ」などは本からも学べますが、本はあくまでも知識を得るためのものですから、実際に使ってみないことにはどうにもなりません。
「会話」ができるようになりたいのであれば、やはり、
実践を通して学ぶのが一番でしょう。
ただ、新聞やインターネットに書いてある情報が話の「ネタ」になることはあるので、読んでいて損はありません。
もし英字新聞を読むのであれば、海外の英字新聞ではなく、
日本の英字新聞のほうが良いと思います。というのも、海外のニュースに興味がない限り、すぐに飽きて(購読をやめて)しまいます。また、日本についての記事が中心となっており、前提知識さえ知っていれば、読みやすくもあります。
Q.5 おすすめの listening 本はありますか?
TOEIC の対策をしたいなら TOEIC の対策本にあるリスニング教材が、英検の対策をしたいなら英検の対策本にあるリスニング教材が最も適していて、得点アップにつながります。
大学の図書館でなくても街の図書館でもそれらの教材を貸し出したりしているので、それらを利用すればお金はかかりません(音源はDLできるのである意味でずっと使える)。
そうではなく、単に「耳を良くしたい」「標準スピードの英語を聞けるようになりたい」というのであれば、スマートフォンのアプリを利用するのが良いと思います。
たいていは無料で利用できますのでそれらを使わない手はありません(広告が邪魔だったりはしますが)。以下、いくつかご紹介しますので、興味があれば使ってみてはいかがでしょうか。たぶん今もまだ使えます。
- TED talk
- VoiceTube
- BBC Learning English (BBC News も good)
- News in Levels
- Learn English Listening
Q.6 おすすめの単語帳を教えてください。
世の中(日本)にはそれこそごまんというほど単語帳がありますので、「コレ!」といったものを教えるのは正直難しいです。
1つの指標としては、
英検でいえば準1級までレベル、
TOEIC でいえば700点強ぐらいのレベルに対応した単語帳を使えば、概ね問題ないと思います。
ただ、個人的には、
大学生・社会人になったら単語帳による単語学習はあまり適していないと思っています。
その主な理由が、中高までと違い、
大学・社会では毎回・毎週の単語テストがほとんど行なわれないからです。
つまり、
覚えないといけないという強制力(強迫観念)がないため、単語帳学習のモチベーションが続かないということです。ただでさえ「いつ出てくるかわからない単語を覚えていく」という苦痛(?)が単語帳学習にはありますから、中高時代以上に「途中放棄する」可能性が高いです。
また、専門的な本には専門的な(特殊な)単語が使われていることもよくあるので、そういった単語はふつうの単語帳にはあまり収載されていないでしょう。特に「英文」と名の付く学部・学科の専門科目の授業ではその世界でしか見ない単語も出てきます。また、スラングなどの言葉も単語帳では基本的には扱われませんね。
目標等によって若干方法を変えたほうが良いとは思いますが、わたしの考えとしては、まずは
①大量の英語に触れながら単語を覚えていくのが良いと思います。
そのうえで、より単語定着を強化するために、
②英検や TOEIC などで高得点を目指すのであればその対策を兼ねている市販の単語帳を使う、
③専門的な用語をしっかりと押さえたいのであれば自作の単語帳を作るのが良いと思います。
③はスマートフォンなどのアプリを使えば比較的簡単に管理ができますし、テスト機能も標準装備されています(例:「シンプル単語帳」)。英検や TOEIC においても自作の単語帳を作っても良いかもしれませんね。
わたしは学生時代、英検や TOEIC / TOEFL で高得点を取りたいと思っていましたから、そのときは①と②の方法で単語量を増やそうとしていました。
今現在は英検や TOEIC などを受験する予定はありませんから、①と③を並行して行なっています。
余談ですが、単語学習をする際は、「受容語彙」と「発信語彙」の区別も意識しておいたほうが良いと思います。
「受容語彙」とは、
主に聞いたり読んだりした際に理解できればよい語彙のことをいいます。一方で、
「発信語彙」とは、
主に話したり書いたりする際に使用できればよい語彙のことをいいます。ときに区別が難しい単語もありますが、そういうものがあるということを知っているだけ(意識しているだけ)でもだいぶ変わります。
単語学習については以下のリンクでも回答していますので、よければそちらもご覧ください。
「
単語学習について」
Q.7 おすすめの英語アニメはありますか?
究極的には好きなアニメで問題ないと思います。
少なくとも日本国内ではアニメはものすごい数ありますから、自身の好みのアニメを英語字幕とか英語音声にして見れば良いと思います。自分が楽しいと思うものでないと見ていてもつまらないでしょうから。
あるいは、海外でも人気のある日本のアニメであれば、何かの拍子にそれが話のネタになることもありますので、そういう目的で探してみても良いかもしれませんね。
たとえば、ONE PIECE や Dragon Ball は数もたくさんあり、話の内容もわかりやすいので扱いやすいですね。あとはジブリ系の映画も知名度があって良いと思います。
海外では、DEATH NOTE や JOJO シリーズも人気がありますので、わたしもすべて揃えてみました。最近では、鬼滅の刃をアニメ、マンガともに英語版を手に入れて最後まで見ましたね。
わたしの場合は、なぜそれが人気になっているのかを知りたいのでそのアニメやマンガを見たりしますが、皆さんの場合は、純粋に楽しい、面白いと思っているからそれを英語でも見るぐらいの気持ちが良いと思います。
なお、日本のアニメを視聴する場合は、違法にアップロードされているものより、公式に見られるもの(動画配信や DVD や Blu-ray など)を参考にしたほうが良いです。
これは違法だからやめたほう良いということではなく、
公式発のものでないとその英語が本当に正しいか(ちゃんと訳されているか)があやしいからです。
海外のアニメでいえば、マーベル作品(アベンジャーズ)のアニメやシンプソンズ、ピーナッツ(スヌーピー)あたりは簡単で見やすいと思います。
あとは何といってもディズニー作品ですね。ディズニー作品は数も豊富ですし、何よりも世界中で知られています。
男女問わずディズニー好きという方も多いでしょうから、普段日本語でディズニー作品を見ているようであれば、これを機にすべて英語で見てみるというものアリだと思います。
余談ですが、わたしが指導していた学生に「ディズニー作品にみられる丁寧表現の使い方」を卒論の題材にした方がいました。
彼女はディズニー作品が大好きで、卒論を機に20のディズニー作品を英語で視聴し、そこから丁寧表現の使い方を分析しました。
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